2014年 03月 31日
「唯有念仏蒙光摂」(ただ念仏のみ有りて、光摂を蒙る)善導大師『往生礼讃』日中讃より 3月14日は唐の善導大師(613~681)のご命日でした。 法然上人が回心され本願念仏(阿弥陀仏に救われている存在だと確信する)の道を歩まれることになったのは、善導大師著作の『観経疏』の中の一文「一心専念弥陀名号 行住坐臥不問時節久近 念々不捨者 是名正定之業 順彼仏願故」(一心に専ら弥陀の名号を念じ、行住坐臥に時節の久近を問はず、念々に捨てたまわざるもの、これを正定の業と名づく、彼の仏の願に順ずるが故に)に出会われたからです。 つまり、法然上人にとっての恩師とも言える存在、いや、恩師以上の存在とも言えるのが善導大師となります。 「遍依善導」という言葉の通り、法然上人は自分の考えや進行は善導大師のお考えによるものであると仰られています。 ですので、日本の法然上人以降の浄土仏教・お念仏の教えは全て善導大師をもとに、善導大師の書かれた『観経疏』(正式には観無量寿経疏・観無量寿経の解釈書)をもとにしています。 言いかえれば「観経疏」をどう読むか?善導大師のお考えとは何か?が我々にとっては一大事となるわけです。 法然上人は比叡山でひたすら仏教の学問と修行をされました。 諸説ありますが、少年期に出家され43歳で回心されるまでの間、ひたすら仏教を学ばれ実践されたお方です。 その法然上人が回心された、という事実が非常に重要になります。 なぜ回心したのか?なぜ善導大師の著作の中の一文で回心したのか? まず回心とは何か? それは簡単に言えば「今までAであったことが実はBであった」となります。 または「今までAしかなかったがBというものが存在していてそれを発見した」とも言えます。 もっと簡単に言えば「気付き」です。 では、法然上人にとって回心とは何か?となります。 その場合のAとは今まで法然上人がなされてきた仏教の修学・実践と定義できます。 そしてBとはその逆になると言えます。 では法然上人がなされてきた仏教の修学とは? 法然上人は比叡山で幅広い仏教学を学ばれています。比叡山に上がる前に叔父の観覚の下では倶舎論(正式には『阿毘達磨倶舎論』という書物・仏教哲学をまとめたもの)を学ばれていたと言われています。比叡山以外の学僧にもその教えを学ばれています。 その当時、日本で学べる仏教学がほぼ全て網羅されていたと考えてもいいでしょう。 また、法然上人が師事された慈眼房叡空上人は日本に浄土仏教ブームを巻き起こした『往生要集』(源信僧都著・念仏三昧による往生・自分の力での往生を目指す考え)の講義で名高い方でしたので、法然上人も浄土仏教に関しては学ばれていたと考えられます。 では、それら諸々の仏教なり浄土仏教の教えの逆転とは何か? そこが善導大師の教え、となりますが、端的に言えば本願念仏であるとなります。 逆に本願念仏というものが何か?と言えば今までの仏教全般・浄土仏教全般の逆転となります。 仏教の基本姿勢は自らが学び、修める、ということがあります。 つまり自分の力、能力によって「さとり」を目指すのが基本姿勢です。 浄土仏教の場合ですと、浄土を自分の力で目指すのが基本となるわけです。 それの逆転とは? 仏の力で浄土へ往生する、ということです。 それが本願念仏、先ほど書いた善導大師の『観経疏』の中の一文「仏の願に順ずるが故に」の「仏の願」を「本」(もと)とするということです。 仏の願とは阿弥陀仏が仏となる時に建てた誓願(誓い・約束)のことで、それは「全てのものを救うこと・極楽往生を決定させることを「成就」さなければ仏とならない」というものです。 阿弥陀仏とはその誓願を成就して仏となった仏、ですので「全てのものを救う」ということがもうすでに確定事項となっているのです。 つまり今まで法然上人は自分の力でなんとかしよう、極楽往生しよう、と思っていたのですが、実はもう極楽往生する、できる、確定している、ということに気が付かれたわけです。 それが法然上人の回心なのです。 他力という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。 自分の力で「さとり」をひらく、極楽往生する、というのが自力、その逆が他力、そして他力とは本願念仏ということになるわけです。 法然上人は他力、本願念仏の教えを回心されたということなのです。 長くなりましたので以下次回・・・
by hechimayakushi
| 2014-03-31 18:44
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